伝統的なデスクトップを提供するMATE Desktop Environmentについて

Last modified: 2021-08-03

概要

開発の経緯

GNOMEデスクトップ環境のバージョン2系では、使い勝手に関係する

  • デスクトップ
  • パネル
  • ファイルマネージャ
  • ウィンドウマネージャ

などの部分において、2010年頃まで親しまれてきた伝統的な形1が用いられていたが、2011年春にバージョンが3系になってからは “GNOME Shell” という全く新しいデスクトップシェルが導入され、GNOMEのセッションにログインした際の使い方が大きく変化したのと同時にGPUのアクセラレーションが実質必須になった。2

また、GNOME 2のような古い、長く慣れ親しんだ形の環境を使い続けたいという人が多数いるということも大きく、自由なソフトウェアとして公開されてきたGNOME 2は、本家のGNOMEとは別のプロジェクトとして “MATE3 Desktop Environment” と名前を変えて、GitHub上で開発を継続することになった。

バージョン番号はGNOME 2とは異なり、独自のバージョンの付き方となる。

デスクトップ環境名の由来

公式サイトによると、“MATE” の名前は “イェルバ・マテ” という木の名前から、とされている。ここからマテ茶というお茶の原料が得られる。

標準で利用可能なディストリ

既にほとんどのLinuxディストリビューションで利用可能になっている。

Debian/Ubuntuではパッケージ名mate-desktop-environmentで最低限のパッケージがインストールされ、mate-desktop-environment-extrasを入れると更に幾つかのパッケージが追加インストールされる。

Raspberry Piのディストリにおいても、公式OSの標準ではないものの、選択可能なGUI環境の一つとして選べるようになってきている。Ubuntu MATEのRaspberry Pi版は、Raspberry Pi 4であればそれなりに快適に動作するという報告がWeb上にある。

Ubuntu MATEなどのMATE搭載のディストリビューションでは、特に追加でパッケージを入れたりする必要はない。

今後

  • 従来型のデスクトップ環境の提供を継続
  • GNOME Shellがまともに動作しないような古いハードウェアでの選択肢になるようにする4

といった部分は約束されており、今後変わる予定はない。この従来型の形をそのままに

  • 各ソフトウェアの機能追加・不具合修正など
  • 新しいソフトウェア構成やライブラリAPIに合わせた色々な修正5 といった変更が行われる。

構成アプリケーション

基本的にはGNOME 2の各アプリケーションの名前が変更された派生ソフトウェアで構成される。

MATE用にソフトウェアを別名で派生させることで、MATE用の派生版とバージョン3系以上のGNOME用のオリジナル版の両方を競合なく正しく動作するようにできる。

電卓のgalculator、ダイアログを扱うコマンド群Zenityといった独立したプログラムは当初はMATE版が提供されていたが、派生バージョンを開発・公開する理由がなくなって廃止となった。

他にも、MATE上でGNOME版のEvinceなどのオリジナルのソフトウェアを別途インストールの上で動かすことはできる。また、将来、別のMATE版のソフトウェアが同様に廃止されていく可能性もある。


  1. “デスクトップメタファー” と呼ばれるもの ↩︎

  2. ソフトウェア描画だと非常に遅くなり、記事公開当時のUbuntu標準デスクトップシェルだったUnityもこのあたりの特徴は同様 ↩︎

  3. 発音的には “まてい” に近く “めいと” ではない ↩︎

  4. ただし他の軽量デスクトップ環境と比較して快適かどうかは不明 ↩︎

  5. 過去のバージョンで既に色々な変更が入っており、今後はGTKの新バージョンやWaylandへの対応といった大きなものもあるが、既にMATE付属の視覚テーマがGTK+ 3向けの外観テーマを同時に含んでいたりといった部分での対応は済んでいる ↩︎